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胸水中に出現する反応性中皮細胞、肺腺癌細胞、中皮腫細胞をメイ・ギムザ染色で鑑別するために有用な細胞質所見を見出し、判定基準の確立を目的とした論文を紹介したい。
2018~2022年の5年間で大阪はびきの医療センターにて胸水細胞診が提出された。968例中、反応性中皮、肺腺癌、中皮腫から各20例をランダムに抽出。各症例のメイ・ギムザ染色1標本あたり50個の細胞を光学顕微鏡で観察し、①細胞質辺縁の微絨毛、②hump様細胞質突起、③細胞質内打ち抜き状小空胞、④細胞質辺縁のメタクロマジーの有無について出現頻度を計数し、3群の症例間についてフィッシャーの正確確率検定を行った結果を報告している。
細胞質内打ち抜き状小空胞の出現率は反応性中皮で低値であり、中皮腫および肺腺癌で増加した。一方、中皮腫では肺腺癌の約2倍の出現がみられるという結果であった。 微絨毛、hump様細胞質突起、メタクロマジーに細胞質内打ち抜き状小空胞を加えた4項目は、中皮腫細胞に比較的特異的な所見とされ、標本内にこれらすべてが認められる場合には中皮腫の可能性が高いと述べられている。 また、hump様細胞質突起はパパニコロウ染色よりもメイ・ギムザ染色でより明瞭に観察できるとの報告もある。 筆者は、既存のメイ・ギムザ染色の所見に加えてこれら4項目を観察することが、反応性中皮細胞、肺腺癌細胞、中皮腫細胞の鑑別に有用となり得ると結論づけている。
胸水中に出現する異型細胞の鑑別では、従来広く用いられているパパニコロウ染色でも鑑別が困難な症例も多いが、メイ・ギムザ染色に関する判定基準の報告は少なく、十分に活用されていないのが現状である。また、近年では個別化治療や分子標的治療などの急速な進歩により、細胞診は良悪の判定のみならず、組織型の推定も求められるようになった。この論文を読んで胸水細胞診のメイ・ギムザ染色の細胞質所見の特徴を確認し、鑑別精度向上に役立てて頂きたいと思う。
Tall cell carcinoma with reversed polarity(TCCRP)は乳腺腫瘍のWHO分類第5版に新たに記載されたまれな組織型で、組織学的に核が基底側から離れて配列する極性の反転を示す高円柱状の腫瘍細胞が充実性または充実乳頭状の構造を示す浸潤癌である。免疫組織化学的には、CK5/6やCK7に陽性、甲状腺マーカーや筋上皮マーカー陰性、トリプルネガティブまたはER弱陽性である。分子病理学的には、IDH2またはIDH2とPIK3CAの両方に遺伝子変異を認める症例が多く、遠隔転移や再発はまれで、予後は良好とされている。
TCCRPの細胞所見に関する報告は非常に少なく、これまでのところ穿刺吸引細胞診が1例、捺印細胞診が1例のみであり、今回紹介する論文では、その穿刺吸引細胞像を中心に報告されている。
穿刺吸引細胞診では核溝や核内細胞質封入体を有する高円柱状細胞から構成され、高細胞型甲状腺乳頭癌に類似する細胞像である。しかしながら、極性の反転を示す細胞集塊に加え、線維血管性間質内に集簇する泡沫細胞を認めた場合、TCCRPを推定することは可能であるとし、TCCRPはトリプルネガティブ乳癌ではあるが予後良好であり、早期に疑うことで不要な過剰治療の回避や、適切な治療戦略の立案に直結すると報告されている。
この学術委員企画をきっかけに日本臨床細胞学会雑誌に投稿されている論文を読んでいただき、日々の細胞診断業務の一助となれば幸いです。
