2022 年度 61 巻 1 ~ 6 号

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2022 年
日本臨床細胞学会雑誌 第 61 巻

Vol.61
紹介論文タイトル
(1) 乳腺多形腺腫の1例
(2) 乳腺穿刺吸引細胞診で細胞外粘液を背景に粘液小球状様構造を認めた浸潤性小葉癌の1例
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ともに乳腺分野で背景に粘液をみとめるところからはじまり組織型推定している症例です.
(1)多形腺腫は唾液腺に好発する良性腫瘍だが,ごくまれに乳腺にも発生することがあり,今回報告している.本症例では穿刺吸引細胞診において,多量の粘液とともに異型の乏しい上皮細胞集塊が多数出現していたためmucocele-like tumor または粘液癌疑いとなり,さらに摘出生検/捺印細胞診からは,ギムザ染色にて異染性を示す多量の粘液とともに多彩な形態を呈する筋上皮細胞や軟骨基質成分が認められ,多形腺腫と推定.組織診では腺組織および形質細胞様筋上皮細胞の背景に粘液性間質がみられ,上皮および筋上皮様の細胞から軟骨成分に移行する像も認めたため,多形腺腫/上皮筋上皮性良性腫瘍(WHO)と診断されている.
(2)浸潤性小葉癌(invasive lobular carcinoma:ILC)はしばしば細胞内粘液産生を伴い,細胞質内小腺腔(intracytoplasmic lumina:ICL)や印環型細胞(signet ring cell:SRC)を形成するが,通常細胞外粘液は伴わないものとされている.今回,筆者は,細胞外粘液を伴うきわめて稀なILCを経験し報告している.本症例では穿刺吸引細胞診において,OG好染した粘液を背景に不規則に配列したシート状集塊~孤立散在性に多数の異型上皮細胞を認め,さらには細胞質内粘液や粘液小球状様構造(mucous globular-like structure)を伴う像もみられ,悪性/分泌癌と推定.部分切除/組織診では古典型 ILC と細胞外粘液を伴う粘液癌様成分が混在した像がみられ,E-cadherinおよびcateninなどの免疫染色結果を併せ,ILC with extracellular mucin:ILCEM と診断している.ILCEM(真性)の一部は粘液癌と診断されている可能性があり,比較的予後良好な粘液癌とは区別しておくのが望ましいものと述べている.
*通常,乳腺分野において背景に多くの粘液様物質をみればmucocele-like tumorや粘液癌あるいは分泌癌を疑うものとなりますが,今回のような稀な組織型の存在を認識しつつ,粘液様物質以外の背景や出現細胞の性状・所見を詳しく観察して鑑別/判定することが臨床的に有意義であり,ぜひ役立てていただきたいものと思い,同時に紹介いたしました.
この学術委員企画をきっかけに日本臨床細胞学会雑誌に投稿されている論文を読んでいただき, 日々の細胞診断業務の一助となれば幸いです.
The Journal of The Japanese Society of Clinical Cytology Vol.61 / 2022,
Introduced by KSCT Academic Member