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2023 年
日本臨床細胞学会雑誌 第 62巻
Vol.62
紹介論文タイトル
SurePath™を用いた液状化検体細胞診における異常細胞検出細胞数の検討
SurePath™を用いた液状化検体細胞診における異常細胞検出細胞数の検討
論文リンク先
今回は「SurePath™を用いた液状化検体細胞診における異常細胞検出細胞数の検討」の論文を紹介させていただきます。
この論文では採取した細胞を効率よく回収できるとされるSurePath™に関して、実際にどの程度の異常細胞が採取されていれば標本で検出可能かを検討した内容となっています。
方法は重層扁平上皮細胞を正常細胞とし、それら50万個に対して異常細胞としたヒト子宮頸癌由来培養細胞株HeLaを5000個、500個、50個、5個の条件で検体サンプルを作製し、3回標本作製が行われました。
結果として、HeLaを5000個入れた検体サンプルから作製した標本からは3枚すべてで十分量のHeLaが検出され、どの視野からも異常細胞として検出されました。500個になっても、異常細胞は減少するものの検出は可能であることが示されています。しかしながら、HeLaが50 個の場合は3枚の標本中2枚、5個の場合は3枚すべてで標本からHeLaを検出することができなかったとされています。
以上のことから、異常細胞が500個以上であれば検出可能であることが示唆されました。一般的に臨床検出段階である腫瘍径1~2cmの腫瘍には長径20μm程度の腫瘍細胞であれば約10億個の腫瘍細胞が含まれているとされており、このことを考慮すると細胞数500個は全体の200万分の1程度であるため、LBCの細胞標本化率が非常に高いことがうかがえます。しかしながら実際の婦人科検体採取の際は異常細胞だけでなく正常細胞も多く含まれることが想定されるため、異常細胞が500個以上含まれていても必ずしも検出可能であるとは限らず、さらなる検討が必要と述べています.
LBCは手順がマニュアル化され、作製者による技術差が発生しにくい点と塗抹面が小さく鏡検面積が減ることから、細胞検査士や細胞診専門医の負担が緩和されます。また、固定液の開発により保存が可能になったことから、遺伝子検査や免疫細胞化学などの幅も広がっています。今回の検討では標本作製時の細胞消失に関して、細胞の大きさや形、集塊形成のしやすさなど様々な特徴の違いが与える影響については検討されておらず、今後LBCがより普及してくためにはこれらを明らかにし、LBC標本への信頼と利点を主張していくことが必要であると最後に筆者は述べています。
この学術委員企画をきっかけに日本臨床細胞学会雑誌に投稿されている論文を読んでいただき,日々の細胞診断業務の一助となれば幸いです。
この論文では採取した細胞を効率よく回収できるとされるSurePath™に関して、実際にどの程度の異常細胞が採取されていれば標本で検出可能かを検討した内容となっています。
方法は重層扁平上皮細胞を正常細胞とし、それら50万個に対して異常細胞としたヒト子宮頸癌由来培養細胞株HeLaを5000個、500個、50個、5個の条件で検体サンプルを作製し、3回標本作製が行われました。
結果として、HeLaを5000個入れた検体サンプルから作製した標本からは3枚すべてで十分量のHeLaが検出され、どの視野からも異常細胞として検出されました。500個になっても、異常細胞は減少するものの検出は可能であることが示されています。しかしながら、HeLaが50 個の場合は3枚の標本中2枚、5個の場合は3枚すべてで標本からHeLaを検出することができなかったとされています。
以上のことから、異常細胞が500個以上であれば検出可能であることが示唆されました。一般的に臨床検出段階である腫瘍径1~2cmの腫瘍には長径20μm程度の腫瘍細胞であれば約10億個の腫瘍細胞が含まれているとされており、このことを考慮すると細胞数500個は全体の200万分の1程度であるため、LBCの細胞標本化率が非常に高いことがうかがえます。しかしながら実際の婦人科検体採取の際は異常細胞だけでなく正常細胞も多く含まれることが想定されるため、異常細胞が500個以上含まれていても必ずしも検出可能であるとは限らず、さらなる検討が必要と述べています.
LBCは手順がマニュアル化され、作製者による技術差が発生しにくい点と塗抹面が小さく鏡検面積が減ることから、細胞検査士や細胞診専門医の負担が緩和されます。また、固定液の開発により保存が可能になったことから、遺伝子検査や免疫細胞化学などの幅も広がっています。今回の検討では標本作製時の細胞消失に関して、細胞の大きさや形、集塊形成のしやすさなど様々な特徴の違いが与える影響については検討されておらず、今後LBCがより普及してくためにはこれらを明らかにし、LBC標本への信頼と利点を主張していくことが必要であると最後に筆者は述べています。
この学術委員企画をきっかけに日本臨床細胞学会雑誌に投稿されている論文を読んでいただき,日々の細胞診断業務の一助となれば幸いです。
Vol.62
紹介論文タイトル
コロナ禍における細胞診業務への影響に関するアンケート調査
コロナ禍における細胞診業務への影響に関するアンケート調査
論文リンク先
この論文はCOVID-19の流行によっての細胞診業務の変化についてアンケート調査を行いまとめたものです。
アンケートは日本臨床細胞学会ホームページ上で行われ、日本臨床細胞学会認定施設の約半数からの回答が得られています。コロナ禍における細胞診検体数の推移や業務内容の変化についてまとめられています。その中で細胞診検体処理の感染対策について施設間差があることが記載されています。
安全キャビネットの設置がある施設が65%、なしの施設が29%となり、集細胞標本作製装置の設置場所について検査室内の安全キャビネット内に設置されている施設は38%とのことです。また、検診の実施状況で特に自治体検診(住民検診)が大きく減少していることがわかりました。
がん検診の実施数が減ったことにより、検診でのがんの発見数も減っていると思われるとのことです。コロナ禍によって細胞診業務以外の分野に配置転換された細胞検査士の能力維持のために必要なことや、コロナ禍が収束した際に元の環境に戻れるように配慮してほしいとの提言があります。コロナ禍における細胞診業務への影響について具体的に数字を用いた報告はあまりないと思います。
この日本臨床細胞学会雑誌に投稿されている論文を読んでいただき、日々の細胞診業務の一助となれば幸いです。
アンケートは日本臨床細胞学会ホームページ上で行われ、日本臨床細胞学会認定施設の約半数からの回答が得られています。コロナ禍における細胞診検体数の推移や業務内容の変化についてまとめられています。その中で細胞診検体処理の感染対策について施設間差があることが記載されています。
安全キャビネットの設置がある施設が65%、なしの施設が29%となり、集細胞標本作製装置の設置場所について検査室内の安全キャビネット内に設置されている施設は38%とのことです。また、検診の実施状況で特に自治体検診(住民検診)が大きく減少していることがわかりました。
がん検診の実施数が減ったことにより、検診でのがんの発見数も減っていると思われるとのことです。コロナ禍によって細胞診業務以外の分野に配置転換された細胞検査士の能力維持のために必要なことや、コロナ禍が収束した際に元の環境に戻れるように配慮してほしいとの提言があります。コロナ禍における細胞診業務への影響について具体的に数字を用いた報告はあまりないと思います。
この日本臨床細胞学会雑誌に投稿されている論文を読んでいただき、日々の細胞診業務の一助となれば幸いです。
Vol.62
紹介論文タイトル
粘液化生を伴うワルチン腫瘍の 1 例
粘液化生を伴うワルチン腫瘍の 1 例
論文リンク先
今回は『粘液化生を伴うワルチン腫瘍の 1 例』という症例報告論文について紹介いたします.
唾液腺腫瘍は炎症性あるいは化生性変化などの二次的変調を伴うため,診断に苦慮することがあります.化生性ワルチン腫瘍の中には粘液化生を伴う症例がみられ,ワルチン腫瘍様粘表皮癌との区別が困難なことがあり,筆者らはこれらの鑑別ポイントについて報告しています.
本症例は喫煙歴のある高齢男性の耳下腺腫瘍です.細胞所見として少数のリンパ球を背景に小型の上皮細胞集塊が出現し,集塊内には核偏在性で桃色調粘液を有する粘液細胞の混在を認めています.また,背景に明らかな粘液成分や壊死成分あるいは扁平上皮成分がみられないものの,粘液細胞の混在を認めたため,低悪性度粘表皮癌との鑑別を要しています.しかし,ワルチン腫瘍と判定し得る好酸性細胞集塊がみられ,粘表皮癌の中間細胞が明らかではなかったことから,粘液化生細胞を伴うワルチン腫瘍と筆者らは判定しています.
ワルチン腫瘍は多形腺腫に次いで発生頻度の高い良性腫瘍であり,時に壊死や扁平上皮化生細胞を伴う症例もあります. しかし, 本症例のように粘液化生がみられるものはワルチン腫瘍の化生性変化率23.1%のうち1.9%であったと報告され,扁平上皮化生型と比較して稀であると考えられます.
低悪性度粘表皮癌との鑑別については, 中間細胞に注目することが肝要であると筆者は述べています. 唾液腺悪性腫瘍では組織型に特異的な遺伝子異常が報告されており,これらは病理診断の補助や予後予測因子として有用であるといわれています.本症例のように低悪性度粘表皮癌との鑑別が必要な場合でもCRTC1/CRTC3-MAML2融合遺伝子の検索や臨床所見を含めた総合的な判断が正確な診断に有用であると報告されています.
本症例のように日常業務で遭遇する機会の少ない疾患も,その存在を知っておくことが重要であると思い紹介いたしました.
この学術委員企画をきっかけに日本臨床細胞学会雑誌に投稿されている論文を読んでいただき,日々の細胞診断業務の一助となれば幸いです.
唾液腺腫瘍は炎症性あるいは化生性変化などの二次的変調を伴うため,診断に苦慮することがあります.化生性ワルチン腫瘍の中には粘液化生を伴う症例がみられ,ワルチン腫瘍様粘表皮癌との区別が困難なことがあり,筆者らはこれらの鑑別ポイントについて報告しています.
本症例は喫煙歴のある高齢男性の耳下腺腫瘍です.細胞所見として少数のリンパ球を背景に小型の上皮細胞集塊が出現し,集塊内には核偏在性で桃色調粘液を有する粘液細胞の混在を認めています.また,背景に明らかな粘液成分や壊死成分あるいは扁平上皮成分がみられないものの,粘液細胞の混在を認めたため,低悪性度粘表皮癌との鑑別を要しています.しかし,ワルチン腫瘍と判定し得る好酸性細胞集塊がみられ,粘表皮癌の中間細胞が明らかではなかったことから,粘液化生細胞を伴うワルチン腫瘍と筆者らは判定しています.
ワルチン腫瘍は多形腺腫に次いで発生頻度の高い良性腫瘍であり,時に壊死や扁平上皮化生細胞を伴う症例もあります. しかし, 本症例のように粘液化生がみられるものはワルチン腫瘍の化生性変化率23.1%のうち1.9%であったと報告され,扁平上皮化生型と比較して稀であると考えられます.
低悪性度粘表皮癌との鑑別については, 中間細胞に注目することが肝要であると筆者は述べています. 唾液腺悪性腫瘍では組織型に特異的な遺伝子異常が報告されており,これらは病理診断の補助や予後予測因子として有用であるといわれています.本症例のように低悪性度粘表皮癌との鑑別が必要な場合でもCRTC1/CRTC3-MAML2融合遺伝子の検索や臨床所見を含めた総合的な判断が正確な診断に有用であると報告されています.
本症例のように日常業務で遭遇する機会の少ない疾患も,その存在を知っておくことが重要であると思い紹介いたしました.
この学術委員企画をきっかけに日本臨床細胞学会雑誌に投稿されている論文を読んでいただき,日々の細胞診断業務の一助となれば幸いです.
Vol.62
紹介論文タイトル
多数の印環細胞が出現した中皮腫の1例 ─細胞学的な鑑別診断に注目して─
多数の印環細胞が出現した中皮腫の1例 ─細胞学的な鑑別診断に注目して─
論文リンク先
中皮腫に出現する印環細胞について、中皮腫瘍取扱い規約(第1版)やWHO分類(第5版)において、上皮型中皮腫の増殖パターンのひとつとして印環細胞型 signet ringと記載がなされ、細胞学的特徴であり、本邦取扱い規約では希有であるとされています。今回の論文執筆者らは、上記症例について、腺癌細胞と中皮腫でみられた印環細胞の形態学的相違を軸に、検討や文献的考察を加えて報告しています。
細胞診標本では、孤立散在性や球状集塊で多数の細胞が出現。空胞状の細胞質やライトグリーン好染の厚い細胞質を有する細胞が混在しており、前者は核が圧排されるように偏在傾向を示すことから腺癌を、後者は細胞辺縁が不明瞭、長い微絨毛を示す細胞が散見されることから中皮腫を推定組織型に挙げており、May-Grünwald-Giemsa染色(以下、MGG染色)で、一部の空胞内腔がメタクロマジーを示していることから、中皮腫に出現する印環細胞が示唆されたと述べています。
さらに、執筆者らが検討した中皮腫10例中の8例に印環細胞が出現しており、そのうち半数の症例で少数のメタクロマジーを示す細胞が認められ、反応性中皮細胞の症例105例中の7例で少数の印環細胞を認めたもののメタクロマジーは明らかではなかったとしています。また、肺腺癌や胃原発印環細胞癌でもメタクロマジーはみられませんでした。これらの結果よりメタクロマジーを示す印環細胞は中皮細胞において良悪の鑑別に有用な所見であると報告しています。
日常業務の体腔液細胞診においても、中皮細胞の良悪や腺癌と中皮腫の鑑別を要する機会は珍しくなく、改めてMGG染色の有用性が認識できます。この学術委員企画をきっかけに日本臨床細胞学会雑誌に投稿されている論文を読んでいただき、日々の細胞診断業務の一助となれば幸いです。
Vol.62
紹介論文タイトル
左上頸部の皮下に発生した異型脂肪腫様腫瘍の穿刺吸引細胞診断にGiemsa染色が有用であった1例
左上頸部の皮下に発生した異型脂肪腫様腫瘍の穿刺吸引細胞診断にGiemsa染色が有用であった1例
論文リンク先
異型脂肪腫様腫瘍/高分化脂肪肉腫は成熟脂肪細胞に類似した腫瘍細胞からなる中間群腫瘍(局所侵襲性)である。WHO分類第5版(2020年)では異型脂肪腫様腫瘍と高分化脂肪肉腫は同一のカテゴリーに分類され、名称は腫瘍の局在と切除可能性により使い分けられています。四肢や皮下の発生例は完全切除が容易なことから異型脂肪腫様腫瘍と呼び、後腹膜、縦隔など完全切除の可能性が担保できない深部発生腫瘍は高分化脂肪肉腫と呼称されています。
本腫瘍は異型核を有する脂肪細胞および異型脂肪芽細胞、線維性間質の出現が特徴で細胞種類の同定にはギムザ染色が有用であると筆者は述べていますが、一般的には立体的観察が必要な腫瘍のためギムザ染色は不適とされています。しかし、パパニコロウ染色ではギムザ染色に比較して細胞境界不明瞭で細胞種類の同定や異型脂肪芽細胞の把握は容易ではなかったとあり、背景の異染性物質等含めギムザ染色の重要性を認識しました。
良性軟部腫瘍で最も発生頻度が高い脂肪腫と軟部肉腫の中で最も頻度が高い脂肪肉腫はこれからも遭遇する機会が多いと思います。腫瘍細胞は成熟脂肪細胞に類似し、細胞診材料では脂肪腫との鑑別が難しいことが少なくありませんが、今後はギムザ染色を加え各所見を重視し判定出来ればと思います。
この学術委員企画をきっかけに日本臨床細胞学会雑誌に投稿されている論文を読んでいただき,日々の細胞診断業務の一助となれば幸いです。
本腫瘍は異型核を有する脂肪細胞および異型脂肪芽細胞、線維性間質の出現が特徴で細胞種類の同定にはギムザ染色が有用であると筆者は述べていますが、一般的には立体的観察が必要な腫瘍のためギムザ染色は不適とされています。しかし、パパニコロウ染色ではギムザ染色に比較して細胞境界不明瞭で細胞種類の同定や異型脂肪芽細胞の把握は容易ではなかったとあり、背景の異染性物質等含めギムザ染色の重要性を認識しました。
良性軟部腫瘍で最も発生頻度が高い脂肪腫と軟部肉腫の中で最も頻度が高い脂肪肉腫はこれからも遭遇する機会が多いと思います。腫瘍細胞は成熟脂肪細胞に類似し、細胞診材料では脂肪腫との鑑別が難しいことが少なくありませんが、今後はギムザ染色を加え各所見を重視し判定出来ればと思います。
この学術委員企画をきっかけに日本臨床細胞学会雑誌に投稿されている論文を読んでいただき,日々の細胞診断業務の一助となれば幸いです。
Vol.62
紹介論文タイトル
超音波気管支鏡ガイド下針生検施行時のサイトクイック染色を用いたオンサイト迅速細胞診の有用性
超音波気管支鏡ガイド下針生検施行時のサイトクイック染色を用いたオンサイト迅速細胞診の有用性
論文リンク先
オンサイト迅速細胞診(ROSE;Rapid On-Site cytologic evaluation)は,採取現場で検体の適正を評価する方法として考案され,その有用性については現在までに多数報告されている.しかしながら,標本作製方法は報告によって様々で,デファクトスタンダードも未だ存在しないのが現状である.紹介論文では,今まで報告されていなかったCyto Quick染色の有用性について,Papanicolaou染色との比較を用いて述べている.
Cyto Quick染色の概要は,Diff-Quick染色と同様にGiemsa染色に近い染色像であり,染色工程が少ない簡便な方法であるとしている.簡便な方法は染色時間の短縮に繋がることは勿論であるが,作業者による染色性のばらつきが少ないことも期待できる.肝心の判定結果について,すり合わせ法にて作製したペアのPapanicolaou染色との比較において,陰性と陽性ともに高い一致率(90%以上)を示した.注目すべきは,報告した同施設で従来行ってきたDiff-Quick染色ではなく,本邦でゴールドスタンダードともいえるPapanicolaou染色と比較した点である.今後,多施設から同様の報告がされれば,Cyto Quick染色がROSEにおける標準的な染色方法になり得る可能性を感じた.
私見であるが,ROSEは創成期が終わり,成長期に入っていると考えている.人員の確保など技術面以外の解決すべき課題は残されているものの,ROSEの普及には標準法の確立が不可欠である.標準法が確立され,アトラスや研修会で細胞検査士の教育が進むことを願っている.今後のROSE成長のカギは標準法ではないだろうか.紹介論文ではいくつかの顕微鏡写真も掲載されているため,ぜひ読んでみてもらいたいと思い紹介した.
この学術委員企画をきっかけに日本臨床細胞学会雑誌に投稿されている論文を読んでいただき,日々の細胞診断業務の一助となれば幸いです.
Cyto Quick染色の概要は,Diff-Quick染色と同様にGiemsa染色に近い染色像であり,染色工程が少ない簡便な方法であるとしている.簡便な方法は染色時間の短縮に繋がることは勿論であるが,作業者による染色性のばらつきが少ないことも期待できる.肝心の判定結果について,すり合わせ法にて作製したペアのPapanicolaou染色との比較において,陰性と陽性ともに高い一致率(90%以上)を示した.注目すべきは,報告した同施設で従来行ってきたDiff-Quick染色ではなく,本邦でゴールドスタンダードともいえるPapanicolaou染色と比較した点である.今後,多施設から同様の報告がされれば,Cyto Quick染色がROSEにおける標準的な染色方法になり得る可能性を感じた.
私見であるが,ROSEは創成期が終わり,成長期に入っていると考えている.人員の確保など技術面以外の解決すべき課題は残されているものの,ROSEの普及には標準法の確立が不可欠である.標準法が確立され,アトラスや研修会で細胞検査士の教育が進むことを願っている.今後のROSE成長のカギは標準法ではないだろうか.紹介論文ではいくつかの顕微鏡写真も掲載されているため,ぜひ読んでみてもらいたいと思い紹介した.
この学術委員企画をきっかけに日本臨床細胞学会雑誌に投稿されている論文を読んでいただき,日々の細胞診断業務の一助となれば幸いです.
The Journal of The Japanese Society of Clinical Cytology Vol.61 / 2022,
Introduced by KSCT Academic Member
Introduced by KSCT Academic Member