2021 年度 60 巻 1 ~ 4 号

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2021 年
日本臨床細胞学会雑誌 第 60 巻

Vol.60
紹介論文タイトル
サイトリッチレッドを用いた LBC 検体の保存温度における核酸品質への影響
論文リンク先 [ Password : jscc15 ]
 この論文ではサイトリッチレッドで固定した培養細胞と臨床検体を室温と低温(4℃冷蔵)で 10 日間保存し,DNA 量や DNA 純度,DIN 値における保存温度の効果について検討が行われています.
 冷蔵保存された未固定検体とサイトリッチレッド検体では DNA 品質に影響がみられなかったのに対し,サイトリッチレッドで固定を行った室温保存検体のものは DNA 品質に影響がみられたため,保存温度が重要という内容になります.
 短期間での比較検討ではありますが,保管温度がDNA品質与える影響が大きい因子ということがわかるものです.本文中では他の文献やゲノム診療用病理組織取り扱い規定での内容も含まれ,改めて検体保存の重要性について触れられています.
 がん遺伝子パネル検査の需要が急速に高まり,その検査の元となる組織検体や細胞診検体の取り扱い方が重要視されています.検体の取り扱い方は未だに施設間差も大きいため,この学術委員企画をきっかけに日本臨床細胞学会雑誌に投稿されている論文を読んでいただき,日々の細胞診業務の一助となれば幸いです.
Vol.60
紹介論文タイトル
オンサイト迅速細胞診における湿固定簡易ギムザ染色の有用性
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 オンサイト迅速細胞診(rapid on-site cytologic evaluation:以下ROSE)時の穿刺吸引細胞診(FNAC)および超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNAB)において99.5%エタノール湿固定後に簡易ギムザ染色「ヘマカラー迅速染色セット(メルク社)」を用いて材料の適否を判定。その後99.5%エタノールで再固定兼脱色、パパニコロウ染色で再染色し、各採取法での詳細な細胞像やその有用性について検討しています。
 利点として①パパニコロウ染色で再染色が可能なため見慣れた染色で同じ細胞の再観察が出来る。②湿固定でも赤紫色の異染性を示す。③脱水透徹作業(キシレンフリー)を行わない。④薬液内にホルマリンが含まれていない。⑤風乾しないため感染症対策として乾燥固定検体に比し安全性が高い。以上より、ROSEに際して有用だと思われます。また今回の検討のように湿固定でもギムザ染色は対応可能であり、既成概念(ギムザ=乾燥)を払拭し柔軟な思考を持たなければならないと再認識しました。
 ROSEは不慣れな検体処理による細胞の乾燥、膨化などを防止するだけではなく、細胞診検体、生検組織の量的、質的評価を目的とし普及が進んでいます。今後は本法も取り入れ、適時用途に合わせた使用法で、より多くの情報を臨床側に提供できる可能性が感じられました。
 この学術委員企画をきっかけに日本臨床細胞学会雑誌に投稿されている論文が、日々の細胞診断業務の一助となれば幸いです。
Vol.60
紹介論文タイトル
癌性腹膜炎, 腹水貯留症例における腹水セルブロック法による治療方針決定について
論文リンク先
 この論文で著者は, 腹水セルブロック法は,高齢者や試験開腹術が困難な進行症例では低侵襲かつ迅速に原発臓器を推定し, 適切な診療科へ早期に紹介できる検査であるため,積極的に作製することは有用であると述べています.
 著者はセルブロック作製法としてアルギン酸ナトリウム法を用いていますが, セルブロックの作製方法にもさまざまな種類があり,各施設が工夫して行っていると思います. 論文中には作製方法の詳細な記載がありましたので, 当院でも試してみたいと思います. また, 材料に限りがある場合には,一次抗体の選択は重要であると感じました.様々な種類の抗体が出てきており原発巣の推定も可能になってきていますが, 原発不明癌も一定割合存在するため留意したいと思います.
 論文中の施設では腹水細胞診陽性の結果を得てから治療方針の決定までの時間が従来よりも短くなっており, セルブロック作製のメリットを記しています. 著者が述べているように, 当院でも癌性腹膜炎の患者さんは病理組織検体の採取が困難な場合も多く, 積極的にセルブロックを作製していくことは肝要であると考えます. また, 2020年4月より肺悪性腫瘍, 胃癌, 大腸癌, 卵巣癌, もしくは悪性リンパ腫を疑う患者に対してもセルブロック法における免疫組織化学的染色が保険収載されましたが, 今後は原発不明癌や癌性腹膜炎, さらには遺伝子検査などの適用も望まれます.
 この学術委員企画をきっかけに日本臨床細胞学会雑誌に投稿されている論文を読んでいただき, 日々の細胞診断業務の一助となれば幸いです.
Vol.60
紹介論文タイトル
アルギン酸ナトリウムFFPEセルブロック法における核酸品質と蛋白発現-ホルマリン固定プロセスの違い-
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 この論文では、アルギン酸ナトリウム法で作製されたFFPEは10%中性緩衝ホルマリンを使用し、固定時間を3および6時間で処理した場合が最も核酸品質を保持し、安定した蛋白発現に適した検体となることを示しています。
 DNAの品質はホルマリン固定時間に依存して低下する傾向があり、固定時間は3~6時間が最も良好で、24時間を超過する場合には品質低下がみられるとされています。免疫染色においても24時間を超えると発現が減弱しています。また10%ホルマリン(非緩衝)に比べ、10%中性緩衝ホルマリンを使用した方がFFPE検体が高品質であることも証明されています。
 2019年6月に「がん遺伝子パネル検査」が保険適用となりました。ゲノム診療用病理組織検体取り扱い規程にもあるように、病理の標本作製は遺伝子検査を目的としたものへと大きく変化してきています。プレアナリシス段階のなかでも、私たち検査技師の関わる固定プロセスは検体の質にとって重要な工程です。しかし、セルブロックに関しては作製方法が様々で固定時間における検討も少なく、何時間程度の固定が最適かと疑問に感じていました。当院では3~15時間程度になるよう心掛けていますが、業務終了間際や休前日に提出された検体では、固定時間の管理が厳しくなることもしばしばです。他のご施設でも、このような状況に遭遇する機会は多いのではないでしょうか。
 今回の検討から、DNAの品質を可能な限り保持した細胞の固定時間を知ることができました。固定時間の見直しは取り組みやすいポイントではないかと感じます。核酸品質の保たれたセルブロックFFPEが作製されることで、今後細胞診検体の有用性も高まるのではないかと感じたためこの論文を紹介させて頂きました。
 この学術委員企画をきっかけに日本臨床細胞学会雑誌に投稿されている論文を読んでいただき、日々の細胞診断業務の一助となれば幸いです。
The Journal of The Japanese Society of Clinical Cytology Vol.60 / 2021,
Introduced by KSCT Academic Member