2020年度

日本臨床細胞学会雑誌2020 vol.59 No.2

今回は『ティッシュペーパーを使用した迅速・簡便な集細胞法(セルブロック法)とその応用に関する基礎的研究』という論文を紹介したいと思います。
 この論文では、従来法のセルブロック(cell block : CB)法とは異なり、ティッシュペーパーを用いたCB作製法(TxT法)を考案し、応用性についても報告されています。
 細胞診検体として提出された体腔液を対象とし、TxT法におけるCBの作製手順および作製に使用した被覆素材の検討、アルギン酸ナトリウム法とTxT法に対するアルシアン青染色の影響、TxT法での免疫染色について検討されています。
 今回の検討では、繊維隙間が狭小なティッシュ2枚組をTxT法に用いることで、パラフィンの浸透性と折り畳まれたティッシュの取り扱いが確実で、かつ破損や腫瘍細胞の漏れ出しを防ぐ最適な被覆素材であると見解を示しています。また、アルシアン青染色や免疫染色についても、ティッシュ繊維が診断に影響を及ぼさないと述べています。
 がん性胸・腹膜炎を伴う終末期がん患者からの病理組織検体採取は困難な場合が多く、皆さまのご施設でも作製する機会があると思い、この論文を紹介させていただきました。筆者も述べられているように、がんゲノム医療の進歩により、免疫組織化学的検索や遺伝子変異解析が求められる昨今、CBは組織材料と同等の結果が得られることもあり重要です。今回考案された、TxT法を用いたCBは、事前準備の必要がなく、経験の有無も問わず操作が簡便です。作製手順やCB以外の検体での応用についても記載されていますので、ぜひご参照いただければと思います。
 この学術委員企画をきっかけに日本臨床細胞学会雑誌に投稿されている論文を読んでいただき、日々の細胞診断業務の一助となれば幸いです。

http://jscc.or.jp/wp-content/themes/jscc/gakkaishi/59-2/z59-2.html

日本臨床細胞学会雑誌2020 vol.59 No.1

今回は『膵癌との鑑別が問題となった慢性膵炎の1例』という論文を紹介したいと思います。 
 論文要旨は、慢性膵炎が反応性の異型細胞や膵上皮内腫瘍性病変 (pancreatic intraepithelial neoplasia : PanIN) を伴う事が知られており、低異型度PanINを伴った慢性膵炎の超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引細胞診 (endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration cytology : EUS-FNAC) の1例を呈示し、高分化型膵管癌との鑑別を報告しています。
 慢性膵炎に出現する異型細胞は、より良性に近い細胞から核の大小不同や核形不整、クロマチン増量を示すものまでさまざまあり、異型の程度には幅があります。高分化型膵管癌の92~99%の症例に認められる細胞所見として①核の大小不同(4倍以上の核径差)、②核膜の不整、③核密集集塊/核の重なり/三次元的構造、④核の腫大(赤血球2個分より大)と言われています。これらの所見は慢性膵炎に出現する異型を示す良性細胞の特徴とオーバーラップすることがある為、高分化型膵管癌との鑑別にはクロマチンの分布の所見が有用であると筆者は考察されています。また、慢性膵炎の細胞学的特徴の目立つ標本では、出現する異型細胞は良性の可能性を考慮して慎重に判断する必要があると述べています。高分化型膵管癌では一見、シート状に癌細胞が出現する為判定に悩む事があります。その場合、高倍率での観察や非病変部を対象とした比較判定は良悪性の鑑別に有用です。
 EUS-FNACが広く普及してきて、皆様の施設でもこのような症例を経験する機会もあるかと思います。そのような時の参考としてこの論文を紹介させて頂きました。この学術委員企画をきっかけに日本臨床細胞学会雑誌に投稿されている論文を読んでいただき、日々の細胞診断業務の一助となれば幸いです。

http://jscc.or.jp/wp-content/themes/jscc/gakkaishi/59-1/z59-1.html

学会誌パスワード:jscc15